業務改善

手順書を書いても仕事が減らないときに見直す8項目|「仕事を手放す」ための型を1枚で公開

社内マニュアルはできた。それなのに、自分の仕事は減っていない。渡したはずの作業について、結局自分に質問が戻ってくる。業務改善で、私たちはよくある行き詰まりだと見ています。

見直したいのは、文章の書き方より、何のために書くかです。読んで理解してもらうだけでなく、その人が仕事を引き受けられるところまで書く。私たちは手順書を、そういう「引き渡し」のための文書だと考えています。この記事では、私たちが使っている8項目の型を1枚で示し、質問が戻ってくる手順書のどこが抜けているかを確かめられるようにします。

説明したつもりでも、判断は手元に残っている

そもそも読まれない、という問題もあります。ただ、読んでもらえれば仕事が減るわけでもありません。

新人が困らないように作るマニュアルは、説明が中心になりやすいと思います。何のための業務か、全体はどう流れるか、何に注意するか。どれも理解には役立ちますが、理解と実行は別です。

途中の判断が書かれていなければ、読む人はそこで迷います。最後に「わからないことがあれば聞いてください」とあっても、仕事を渡しきれたことにはなりません。実務に加えて質問対応も増え、忙しさが変わらないこともあります。

見やすさや図解を整えるのも無駄ではありません。ただ、その前に、どこで迷い、何を根拠に決めるかを書きたいのです。見た目だけ整っていても、判断が抜けていれば、そこは書いた人の手元に残ります。

手順書を「引き渡し書」と考える

私たちは、中小企業の業務の仕組み化を支援しながら、自社でも同じことを進めてきました。手順書についての考えは、その両方から出ています。

仕事の持ち主を移すために書く。そう考えると、読んだ人が理解したかだけでなく、そのあと仕事がどこまで進むかを見るようになります。属人化の解消でも、私たちはそこを重視しています。

渡し先は、ほかの人、自動化された仕組み、AIの3つです。人への説明だけを前提にすると、条件や完了の定義が省かれがちです。仕組みやAIにも渡したいなら、いつ始め、どの手順で進め、何をもって終わりにするかまで必要になります。

設立時に決めたのは、仕事が増えたら、まず仕組みかAIに渡せないかを考えるという原則でした。人を増やすのは、そのあとです。渡す相手が人間とは限らないので、「察してもらう」余地はできるだけ減らす。曖昧なままなら、結局その仕事は手元に戻ってきます。

長い目で見ると、AIの性能は横並びになっていくのではないか、と私たちは考えています。そうなったときには、自社のAIに何を読ませられるかが差になる。手順書を経費というより、設備投資に近いものと捉える理由です。

確認する問いは、書いた手順書を渡して、自分がその後を見なくても仕事が終わるか。止まるなら、どの条件や判断が足りなかったかを見直します。

渡せる手順書の型(そのまま使える1枚)

私たちが使っている型は、次の8項目です。まず、この1枚を埋めるところから始めます。

項目

書くこと

抜けると起きること

1. 目的

この手順で何が達成されるか。やらないと何が困るか

手順の意味がわからず、迷ったときに自己判断できない

2. 開始条件

いつ始まるか。何をきっかけに動くか(曜日・受信・申込など)

気づいた人がやる状態が残り、抜け漏れが出る

3. 必要なもの

使う道具、アクセス権、元データの置き場所

着手してから止まり、結局書いた人に連絡が来る

4. 手順

番号付きで1ステップ1動作。押すボタン名まで具体的に

人によって結果が変わる。自動化にも置き換えられない

5. 判断基準

分岐する場面と、どちらを選ぶかの条件を数値や状態で

作業だけ渡って判断が手元に残る。つまずきやすい点

6. 完了条件

何がどうなったら終わりか。どこに何を残すか

終わったかを確認する仕事が新しく増える

7. 例外・停止条件

こうなったら止めて誰に上げるか。想定外の合図

例外のたびに全部が止まり、渡した意味がなくなる

8. 更新履歴

いつ誰が何を変えたか(1行でいい)

内容が古いかどうか判断できず、誰も信じなくなる

特に省きたくないのは、2番の開始条件、5番の判断基準、7番の例外です。表紙や目次を作るより、この3つを埋めるほうを優先します。

そばに先輩がいる前提なら、始めるきっかけも、迷ったときの判断も、想定外への対応も、人が補えます。ただ、それでは難しい部分ほど人に残る。渡すための文書に移したいのは、まさにそこです。

実際の記入例:図解画像をAIに作らせる手順書

以下の画像制作と文書の受け渡しは、このコラムの初稿時点の運用です。当時、図解画像をAIに作ってもらう手順書も、この型で書いていました。

  • 目的:記事の内容に合う図解画像を、指定の寸法と枚数でそろえる
  • 開始条件:原稿が確定したとき
  • 必要なもの:発注書の雛形と記事フォルダ
  • 手順:発注書の作成から実行コマンドまで、番号付きで並べる
  • 判断基準:画像内の文字と記事タイトルが一致しているか。縮小しても読めるか
  • 完了条件:指定の枚数と寸法のファイルが所定の場所にあり、記録が追記されている
  • 例外・停止条件:文字が欠けていたら発注書を直して再実行。2回で止めて人に上げる
  • 更新履歴:仕様を変えた日付と変更点を1行

この粒度まで決めたことで、自動処理に置き換えられました。自社の業務に当てはめるなら、たとえば「毎週の請求データを会計ソフトに取り込む」でも、同じ8項目で書けます。開始条件は「毎週月曜の午前」、判断基準は「金額が前月比で2倍以上なら担当に確認」、例外は「取引先名が一覧にない場合は止めて経理に上げる」といった具合です。数字や条件は、自社の実態に合わせて置いてください。

作業の始め方や判断、止める条件を含め、手順を次の人に渡すための文書を表したイメージ

人に渡して見つけた穴を、仕組みやAIへ渡す前に埋める

型が埋まったら、まず人に渡し、次に自動化し、最後にAIへ。この順番を、私たちは文書を具体的にしていく目安にしています。

人に渡すと、書いていないところが質問として返ってきます。答えをその場で伝えて終わらせず、手順書にも足す。そうすれば、次に渡す人のためにも残せます。質問が来たら、8項目のどこに書くべきことだったかを当てはめると、抜けやすい項目も見えてきます。

自動処理やAIに渡す場合は、疑問点を質問してもらえるとは限りません。どの条件で止まり、誰に確認を求めるかまで決めておく必要があります。自動化とAIは、実際には重なることもあります。当時の画像制作も、AIが作る工程ごと自動処理で包んでいました。3段階は能力の格付けではなく、文書の具体性を確かめる目盛りです。

そのとき効いてくるのが、7番の例外欄です。手作業で何度か試すと、元データがそろわない、想定していない依頼が混ざる、といった場面が出てきます。その場で人が処理したことを、次の例外として書き足します。

ここが空のまま自動化すると、想定外のたびに止まり、結局書いた人が呼ばれます。私たちが文書化を先、自動化を後にするのは、そのためです。考え方は設立1年目の会社が作った業務の仕組みにも書きました。

初稿時点では、先ほどの図解画像の手順書を1本の自動処理にし、人はできあがりの良し悪しを判断する役割でした。これは当時の分担です。自動化できた範囲も固定せず、問題が出たときは、人が見直す条件を手順書に戻します。

AIに渡すなら、書式をそろえる

用語がぶれていたり、手順を画面写真だけに頼っていたりすると、何を指示したいかが曖昧になります。使うAIによって画像の扱いも違うので、操作や判断は文章でも残しておくほうが渡しやすいと考えています。

当時のAI同士の受け渡しは、文書ファイル経由でした。企画書も原稿も発注書も進行状況も、同じ場所に文章で置く運用です。どの業務にAIを当てるかで迷っているなら、中小企業のAI活用は何から始めるかも参考にしてください。

人からの指摘は1つの文書にためて、AIが作業前に読むようにしていました。手順書の8番目に更新履歴を置くのも同じ理由で、完成品として保管するより、直しながら使うものだと考えています。

人、仕組み、AIへの受け渡しを、文書の具体性を確かめる目安として示す図。停止条件と確認先も残す

1本目は、小さく渡せる仕事から

全部を手順書にしようとすると、書くこと自体が大仕事になります。候補がまだ見えていないなら、先に業務を棚卸しするほうがよいと思います。すでに候補があるなら、最初の1本は次の3つで選んでください。

  1. 毎週以上の頻度で発生する。年に1回の仕事より、書いた手順をすぐ試し、直せる仕事を選ぶ
  2. 手順がほぼ毎回同じ。分岐が2つか3つで収まるものにする
  3. 止まっても事故にならない。渡し方を練習できる、失敗の影響が小さい仕事から始める

商談、クレーム対応、値決めのように、相手の感情や関係性が絡む仕事は、少なくとも1本目には向きません。判断基準を「相手の反応次第」としか書けないうちは渡さない、というのが私たちの判断です。社内でも、この領域は人が持っています。最後まで人に残るのではないかと思いますが、そこはまだ断定できません。

書くときは、いま自分で作業をしながら残すのが確実です。あとで理想の手順を思い出そうとすると、普段は無意識にしている確認が抜けます。その抜けたところに、質問が戻ってきます。

型を埋めても、渡せないことがある

8項目が埋まっても、渡す相手が決まらない、渡したはずが手元に戻る、ということは起きます。相手に時間がない、権限がない、そもそも引き受ける理由がない。手順書の書き方ではなく、誰が引き受け、どこまで人が持つかという分担の問題です。そこは文書を直すより、人と役割の整理が先になります。

今日できる一歩

1本目は、30分で書ける粒度で十分です。完璧な1冊を目指すより、1枚を渡してみる。質問が来たら答えを足し、自分がついていなくても終わるかを確かめます。すでに手順書があるなら、8項目のうち2番・5番・7番が埋まっているかだけ、今日確かめてみてください。

Polyzmでは、中小企業の業務の仕組み化とAI活用を支援しています。この記事の型は、そのまま自社で使ってください。書いてみたが渡し先が決まらない、どの業務から手放すか迷うという方は、無料相談からお声がけください。いまの手順書と、質問が戻ってくる場面を伺い、先に埋める項目を一緒に整理します。

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