業務改善

業務改善はどこから手をつける?8列の棚卸しシートで仕事を見直す

社内が忙しい。ムダも多い気がする。そこで業務効率化を調べ始めると、気づけばツールの比較をしている。無料期間を試しては、結局どれも決めきれずに終わる。中小企業の経営者や管理担当者なら、覚えのある流れだと思います。

私たちは、その前に自社の仕事を1枚に書き出すほうがよいと考えています。何を減らしたいかが曖昧なままでは、便利そうな機能は見つかっても、やめる仕事が決まりません。

業務改善はツール選定ではなく、やめる業務と仕事の流れの棚卸しから始まります。 使うのは、このあと載せる8列のシートです。書き方の例と、埋めたあとに4つに仕分ける順番まで、この記事で扱います。

ツールを入れたのに、仕事が増えるのはなぜか

ツールを導入しただけで、いまの仕事が自動的になくなるわけではありません。何を移し、何をやめるかが決まっていなければ、管理する場所だけが増えることもあります。

新しい管理ツールを入れたのに、念のためエクセルも残す。同じ情報を二か所に入力することになります。あるいは、ツールに情報を入れる担当が新たに必要になる。選定中も、比較記事を読み、資料を集め、無料期間を試す時間はかかります。その間、現場の仕事は残ったままです。

効率化の記事を読むと、手法の一覧に続いて、おすすめツールが紹介されているものが多くあります。勉強にはなりますが、自社のどの業務に当てるかは、結局自分で決める。その難しいところが読者側に残っているのではないか、というのが私たちの見立てです。

なので、先に自社の仕事を1枚にします。手法やツールは、それを見ながら選びたいと思います。

まず埋める、8列の棚卸しシート

私たちが棚卸しに使うのは、次の8列です。

業務名(動詞で書く)

担当

頻度

1回の時間

月合計

誰のための仕事か

手順を書けるか

判定

書き方の例も載せます。架空の例で、実在する会社の数字ではありません。日々の仕事は月20日、週ごとの仕事は月4週として計算しています。

業務名(動詞で書く)

担当

頻度

1回の時間

月合計

誰のための仕事か

手順を書けるか

判定

請求書を作ってPDFで取引先に送る

経理担当

月1回・20社分

5分

100分

取引先と自社の入金確認

書ける

渡す

日報をまとめて社内メールで共有する

各担当

毎日

10分

200分

(答えられない)

書ける

やめる候補

見積もりの中身を決める

代表

週2回

40分

320分

顧客

書けない

残す

日報は、受け取り手が不明なので「やめる候補」としています。不明というだけで止めず、仕事の目的、必要性、なくした場合の影響を確かめてから判断します。

右端で最終的に決めるのは、「やめる・減らす・渡す・残す」の4つです。書き出す段階では、まだ空欄で構いません。

全社を一度にやろうとすると、範囲が広くなります。まず一つの部門か、自分の周りの仕事を2週間ぶん。粗くても、抜けを減らすことを優先するくらいが現実的だと思います。紙でもエクセルでも、8列があれば形式は問いません。

書き出した仕事を分類し、残す仕事と渡す仕事を考える立体模型

項目を埋めるときに、見たいところ

欄が埋まっていても、中身が曖昧だと判断には使えません。書く単位をそろえるだけでも、あとが変わります。

業務名は、何をするかまで書く

「請求」「経理」だけでは、中に何の作業があるかわかりません。「請求書を作ってPDFで取引先に送る」まで書けば、手を入れる対象が見えます。動詞で書きにくいなら、いくつかの仕事が一つにまとまっていないかを見て、行を分けます。

担当は、実際に手を動かす人まで

「経理」「営業部」で止めず、実際に担当している人を書きます。渡し先を考えるためです。名前が2人、3人と並ぶなら、どこを分担しているかも聞いてみてください。誰かが気づいたときにやる状態になっていないか、ここで確かめます。

頻度と時間は、まず体感でよい

最初からストップウォッチで測らなくても、「だいたい10分」で十分です。精度を求めすぎて書き出しが止まるより、まず全体を見たいからです。件数によって負担が変わるなら、「月1回・20社分」のように件数も残します。1回の時間は1件あたりで書きます。

月合計は、計算して比べる

頻度、件数、1回の時間を掛けて、月あたりの分数を出します。たとえば1回5分でも、月20日行えば100分です。逆に、面倒に感じる月次作業が月60分ということもあります。

体感の面倒さと、使っている時間は同じとは限りません。この列があれば、少なくとも時間の大きさを比べて、改善の順番を考えられます。

「誰のためか」が書けなければ、受け取り手に聞く

成果物を誰が受け取り、何に使っているかを書きます。ここが空欄になる仕事は、やめる候補です。「昔からやっている」だけで続けていないかを確かめたいところです。

ただ、思い出せないだけで不要とは決めません。受け取り手に「これ、なくても困りますか」と聞きます。保存や報告が必要な事情も確かめてから、実際にやめるかを判断します。

手順は、他の人が再現できるか

「書ける・書けない・すでに書いてある」の三段階で見ます。「誰でもできるか」ではなく、読んだ人が同じように進められる形にできるか、という問いです。手順を書けない仕事は、人にも道具にも渡せません。 私たちは、少なくとも安定して引き渡すためには、ここを曖昧にしないほうがよいと考えています。

月次と年次の仕事も拾う

いま忙しい仕事だけを書いていると、月末の作業、決算期の作業、年に数回の届け出が抜けます。過去1年ぶんのカレンダーと送信済みメールをさかのぼると、思い出す手がかりになります。頻度は低くても、負担が大きい仕事は残しておきます。

書き出したら、4つに仕分ける

棚卸しは、現状を記録して終わりではありません。次に何をやめ、何を変えるかまで決めるために使います。最後の判定欄は、次の順に見ます。

  1. やめる。受け取り手が不明な仕事は利用先や必要性を確かめ、なくても困らないと確認できたものを候補にする
  2. 減らす。必要だが、頻度や細かさが過剰な仕事。週次を隔週にする、報告項目を半分にする
  3. 渡す。手順を書けて、途中の判断を残さず進められる仕事。人か道具に渡す
  4. 残す。判断が必要な仕事、相手の感情が絡む仕事。人が持つものとして残す

上から順に見て、当てはまらないものを次に送ります。「やめる」を飛ばして渡し先を探すと、不要な仕事を速く回すためにお金を使うことになります。やめれば0分になるのに、月額料金を払い、自動化の設定まで行う。私たちは、そこを避けたいと考えています。

一方、「残す」に何を置くかは経営判断です。顧客と向き合う時間や、次の一手を考える時間まで減らしたいわけではありません。やめて空いた時間を、どこに使うか。先に考えておくと、改善が仕事を削るだけで終わりません。

仕事をやめる、減らす、渡す、残すの順に検討し、渡す仕事のためにツールを選ぶ図

ツールは「渡す」と決めた1行のために選ぶ

「渡す」の行が出てきたら、月合計が大きい順に並べて、一つ選びます。その仕事のためにツールを探せば、比較したい機能も具体的になります。比較記事を端から読むより、何が必要かを絞りやすいはずです。

同時に2つ入れないことも、先に決めておきます。2つを一緒に変えると、何が効いたかを分けて見にくくなるからです。次の改善にも使えるよう、一つずつ試します。

設定の前には、まず手作業でやってみて、うまくいった手順を文書にします。その文書に沿ってツールを設定する。遠回りに見えますが、例外がわからないまま自動化するより、止まる条件を先に見つけられます。手順を文書にする型は、仕事を手放すための手順書の8項目にまとめています。

私たちも、自社の制作や運用では文書化を先、自動化を後にすると決めています。その実際は、設立1年目の会社が作った業務の仕組みに書きました。

AIを使う場合も、「渡す」の行を候補にするところからでよいと思います。どの仕事に使うかが決まってから、任せ方を考える。始め方は中小企業のAI活用は何から始めるかにまとめています。

シートを埋めても、決まらないこと

シートは、一つの部門からでも埋められます。難しいのは、そのあとです。やめる判断には、社内の力関係や過去の経緯も絡みますし、渡し先をどう作るかで迷うこともあります。「やめる候補」に挙がった日報を、実際に止めるには、それを受け取っていた人との話し合いが要ります。シートが教えてくれるのは、話し合う相手と材料までです。

今日できる一歩

自分の周りの仕事を、今日1日ぶんだけ8列で書いてみてください。3行でも構いません。「誰のための仕事か」が埋まらない行が一つでもあれば、それが最初に確かめる相手と話題になります。

Polyzmでは、業務の棚卸しから、やめる業務の見極め、ツールの選定と定着まで支援しています。このシートは、そのまま自社で使ってください。埋めたシートを前に、どこから手をつけるか、やめる判断をどう社内で進めるかで迷う方は、無料相談からお声がけください。書き出した行と、迷っている判定を伺い、最初の1行を一緒に決めます。

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