「何でもできます」を卒業する|小さな会社の強みを、相談につながる言葉にする
技術には自信があるし、頼まれれば幅広く対応できる。それなのに、会社紹介を書こうとすると「高品質」「柔軟な対応」「お客様第一」が並んでしまう。
間違ったことは書いていない。でも、初めて読む人には、自分の仕事を頼んでよい会社なのかが見えにくい。ここは、言葉を立派にするより、どんな場面で相談してほしいかを具体的にしたほうがいいと、私たちは考えています。
できる仕事を減らすわけではありません。まず、最初に伝える頼みどころを一つ決める。そのくらいから始めてみてください。
幅広くできるからこそ、最初の頼みどころを添える
手がけてきた仕事を知っている相手なら、「何でもできます」でも対応の幅を思い浮かべやすいでしょう。初めて会社を知った人には、その前提がありません。
たとえば「住宅の工事に幅広く対応します」とあっても、小さな修理を頼めるのか、住みながらの改修を相談できるのかはわかりません。対応の幅を伝えたつもりでも、頼む場面は読み手に考えてもらう説明になっています。
そこで、具体的な頼みどころを添えてみます。実際にその対応ができる会社を想定した架空の例なら、「住みながら水回りを直したい方へ。工事中に使えなくなる設備と、その期間を事前に説明します」。これなら、何を相談してよいかが見えます。
絞るのは、会社ができる仕事の全てではなく、最初に伝える相談の入口です。 ほかの業務はサービス一覧などで補えます。一つの短い文章で、会社の全てを説明しようとしなくていいと思います。
強みを考えるなら、過去の依頼を開いてみる
「当社の強みは何か」と机の前で考えていると、また抽象的な言葉に戻ってしまいがちです。材料にしやすいのは、問い合わせの内容、見積もり前の質問、実際に追加した対応など、すでに残っている仕事の記録です。
お客様は最初に何に困っていて、それに自社はどう応えたのか。日程の調整が難しかったのか、仕様が決まらず相談先を探していたのか、既存の設備を残す必要があったのか。何を作ったかだけでなく、依頼前の事情まで戻ると、説明できることが増えます。
川崎中小企業診断士会の「自社の強み」を明らかにする方法でも、沿革や既存顧客との取引理由から材料を拾い、具体的な表現へ整理する方法が示されています。特別な技術の名前だけを探さなくてもいいわけです。
ただ、取引が続いている理由は、こちらの想像だけでは決められません。お客様の言葉が残っていなければ「選ばれた理由」はまだ未確認です。「この対応が役立ったのではないか」という仮説にして、次の会話で確かめるくらいがよいと思います。
一度だけ無理をしてできたことも、そのまま通常のサービスとして約束してよいかは別の話です。今の体制で繰り返し提供できるか。紹介文に使う前に、そこは確かめておきたいですね。

「誰の、どんな場面の、何を助けるか」
材料が集まったら、文章にする前に四つに分けてみます。下は、住みながらの水回り改修を想定した架空の記入例です。自社で実際に対応できる内容に置き換えて使ってください。
記入すること | 記入例 |
|---|---|
誰に | 自宅で暮らしながら、水回りを直したい方 |
どんな場面で | 工事中の生活への影響がわからず、依頼を迷っているとき |
何を助けるか | 使えなくなる設備や期間を把握し、予定を立てること |
どう対応するか | 現地確認のうえ、工事の順序と生活への影響を説明する |
「誰に」は、年齢や業種だけで決めなくても構いません。同じ年代でも、急いで修理したい人と、時間をかけて改修を考えたい人では、知りたいことが違います。相談する場面まで書くと、必要な説明を選びやすくなります。
候補がいくつもあって迷うなら、実際に得意で、今後も受けたい仕事を一つ選びます。見栄えがよくても、問い合わせが来たときに対応できない仕事では困ります。売上に加えて、提供する体制や、継続して引き受けられるかも判断に入ります。
四つが埋まったら、相手が依頼前に知りたい順に並べてみてください。全部をつなぐと長くなるなら、見出しと説明文に分ければ十分です。短くするために対応条件を削ってしまうと、別の約束になりかねません。
「柔軟な対応」で、何をしてもらえるのか
先ほどの例なら、見出しは「住みながらの水回り改修をご相談ください」。その下に「現地確認のうえ、工事の順序と、設備が使えなくなる期間を説明します」と添えます。
「暮らしに寄り添う柔軟な工事」より、相談できることと、受けられる説明が見えます。ここで約束しているのは、工事の順序や生活への影響を説明することです。設備が必ず毎日使える、希望どおりの日程になる、とまでは言っていません。現地で判断する条件は残したままです。
印刷会社での架空の書き換えも考えてみます。実際に対応できるなら、「小ロットにも柔軟に対応」に加えて、「イベントで使う少部数の印刷物について、部数と仕様を決める段階から相談できます」と伝えられます。最低部数や対応できる仕様は、別途正確に案内します。
根拠のない「最短」「地域一番」を足さなくても、相談前に知りたいことは伝えられます。まずは自社で確認できる内容を書く。それで十分だと思います。
書けたら、業務をよく知らない人に「どんなときに、この会社へ相談すると思うか」と聞いてみてください。「よい文章ですね」という感想はありがたいですが、それだけでは頼みどころが伝わったかはわかりません。意図した相談の場面が浮かぶかを見たいところです。

紹介文と、実際の受付が食い違わないように
紹介文ができたら、その近くに、読み手が次に知りたくなる情報を添えます。仕事の進め方、掲載できる事例、対象地域、相談から見積もりまでの流れ。全てを一度に増やすより、その一文から生まれる疑問を埋めていくほうが整理しやすいです。
たとえば「仕様を決める段階から相談できる」と書くなら、未確定のまま何を送ればよいかも必要です。「用途と希望時期、わかる範囲の数量をお知らせください」とあれば、最初の連絡ができます。ここで完成した仕様書の添付が必須になっていたら、せっかくの紹介文と受付方法が食い違います。
公開する前には、営業担当だけでなく、実際に対応する人にも見てもらってください。繁忙期にも同じ対応ができるか、どこまでなら案内してよいか。条件があるなら先に添えます。問い合わせをもらってから説明を取り消すのは避けたいですね。
変更後は、件数とあわせて、期待する種類の相談が届いているかを見ます。同じ説明を繰り返し求められていないか、対象外の依頼が増えていないかも材料です。ただ、件数の変化を紹介文だけの効果とは決められません。流入や時期の違いもありますし、まだ少ない件数なら判断を急がず記録を続けます。
見直すのは、ホームページや営業資料の冒頭の一文からで構いません。「何ができるか」を読んで、「どんなときに頼めるか」まで浮かぶか。サイト全体を作り直すか迷っている方には、ホームページを作り直す前に確かめたいことも参考になります。
Polyzmは、中小企業の集客の仕組みづくりを支援しています。自社の何を入口に置き、どんな情報を添えるかから整理したい方は、相談窓口からお声がけください。